「あ、あのね、友達になってくれる?」
「友達?」

 勇気を持って切り出せば、圭斗が不思議そうに首を傾げた。

「駄目、かな……?」

 まずは友達から、というのもありきたりだが、重要なことに思えた。
 彼とは出会って間もない。
 すると、圭斗は顎に手を当てて、考える仕草を見せる。

「それって、ただの後輩じゃないってことっスよね?」
「そう、なの、かな……?」

 ただの後輩とそうじゃない後輩の区別が一体何なのか紗綾にはわからなかった。
 彼は一体どうなりたいのだろうか。

「そういうことで解釈させて下さい。レベルアップってことで」
「レベルアップ?」
「メールしたり、遊びに誘ったり、遠慮しないっスから」

 ニッと圭斗が笑う。今まで遠慮していたのだろうか。
 だが、紗綾にとって友達が増えるということは単純に嬉しいことだった。
 そうして、それから彼と色々なことを話した。
 その時間は後ろめたさを感じながらも、後に控える不安なことなど吹き飛ばすほど楽しいものだった。