休み明けの昼休み、香澄との昼食が終わった時、紗綾は思わず歓迎会のことを思い出して溜息を吐いてしまった。
 考えれば考えるほど憂鬱になる問題だ。
 そして、まるで見計らったかのように彼はやってきた。

「可愛い女の子が溜め息を吐くのは良くないよ。悪い男に隙を与えてしまうからね」

 いつも彼は穏やかで天使のように見える。
 悩みを抱えた人間の前に現れるのが彼の使命なのではないかと思うほどに。

「将也先輩……」
「歓迎会、お疲れ様」

 将也はニッコリと笑む。だが、それだけで全てが吹き飛んでくれれば苦労はなかった。

「田端君、少し紗綾ちゃんを借りてもいいかな?」
「私が嫌だって言っても連れて行きますよね? 私が決めることじゃないとか言って」

 香澄が不満げに将也を見る。
 この二人は仲が良いのか悪いのかわからない時があると紗綾は思う。

「君はいつも一緒じゃないか」

 いつものように将也は香澄の視線を躱す。

「じゃあ、行こうか。それとも、君の方が嫌かな?」

 一体、誰が彼を拒むと言うのだろう。
 紗綾は首を横に振り、その後について行く。