「まあ、俺はそれなりに君のことを認めてるつもりなんだよ。あいつのことよりはずっと、ね」

 自分から持ち出した話を嵐は終結させようとしていた。
 けれど、圭斗は素直に終わらせるつもりはないのかもしれない

「けど、センセーが認めてるのは俺じゃないってわかってるっスよ。本当は俺じゃないって」

 圭斗ではない誰か、魔女もそんなことを言っていたと思い出す。
 しかしながらその言葉の裏側が紗綾には見えない。
 同じ空間にいながら、決して混ざることのないラインを惹かれているようで、苦しかった。

「君は逃げてるのか、立ち向かおうとしてるのかわからないね」
「俺は、ただぶち壊してやりたいだけっスから。俺が何もかもぶち壊されたのと同じように」
「若いのに復讐なんて精神的に良くないよ」
「センセーぶらないで下さいよ。それに、これは復讐心じゃない。ただ喧嘩の続きがしたいだけっスよ。それに、決着つけずに逃げたのは俺じゃないんで」

 表情の見えない圭斗の声は寂しげで、どこか客観的に見ていた紗綾に本当に何もできない自分の存在を思い知らせた。


 そして、何もわからないまま、歓迎会という名の洗礼は終わりを告げた。
 それは紗綾にとって悪い夢にも似ていたのかもしれない。
 しかしながら、これは、まだ始まりに過ぎないのだ。