夕食後、嵐が除霊に行った先で起きたことを説明してくれた。
 紗綾の視界の隅には正座をさせられているリアムが映る。
 その反対側にはひどく疲れた様子の十夜がいる。
 いつ倒れても不思議ではないと心配になるほどだ。

「いや、幽霊を殴るとか窓から投げ飛ばすとか不穏なこと言ってたけどさ、あそこまでひどいとは思わなかったよ」

 嵐も疲れているのがわかる。
 普段は十夜に振り回されがちだが、今日はその十夜もすっかりリアムに振り回されたようだ。

「キレて、強制除霊しようとしたり、昔の黒羽より酷いよ。いや、ほんとにあの頃の黒羽が可愛く思えてきて涙出ちゃうよ」

 ちらりと視線を投げかけられた十夜がさっと視線を逸らす。
 この二人の関係は単なる教師と生徒ではない。それ以前からの関係がある。
 親戚のお兄ちゃんのようなものだと嵐は言うが、そんな明るい関係でないことは二人のやり取りから滲み出ている。