「主催のくせに何言ってるんスか」

 圭斗が呆れたように言う。尤もなことだ。
 彼女は責任者であるのに、あまりに自由すぎる。無責任とも言える。
 それだけ嵐達を信用しているとも考えられるが、これくらいできて当然だというプレッシャーの方が近いのかもしれない。
 だが、紗綾は先ほどからずっと気にかかっていたことを思い出した。

「あたしには、こっちより優先すべきことがあるのよ。急用ってことね」

 連絡を取っていたのは仕事の話だろうと紗綾は思う。
 今回の研修と称した一件も確かに魔女の仕事だが、自分の力が必要ないと思うものはいつだってオカ研に押し付ける。
 特にその矛先は十夜に向けられ、紗綾も巻き込まれた思い出したくない記憶がある。トラウマというものなのかもしれない。
 だが、彼女が請け負って解決するものも確かにあるのだ。
 彼女がいる事務所には他にも有能なサイキックがいるのだが、手が離せないということもある。皆、それぞれ忙しいらしい。
 能力は一番でも、彼女は事務所では下っ端という位置付けでもある。

 しかし、彼女がいなくなると少しほっとするところもあるのは確かだ。
 悪霊の件は嵐と十夜がいればまず問題ないと紗綾は信頼している。
 魔女が手を出さなければならないというのはよほどのことである。その状況の方がまずいくらいだ。
 彼女が離れるということは、大丈夫だとわかってのことだろう。