善美の話は彼女の友人達といた時よりもずっと入り込んだものだった。
 今までにオカ研で扱った事例や紗綾自身の心霊体験にも興味を示したが、彼女を楽しませられるよう話はなかった。いつも紗綾は見ているだけで霊的なパワーは微塵も感じたことがない。
 本当に付き合っている人間はいないのか、好きな人はいないのか、圭斗のことはどう思っているのか、詰め寄られもした。
 恋愛に興味津々な年頃なのだろう。しかし、残念なことに紗綾には彼女に語ってやれるような恋の話がない。
 思い切って善美の方はどうなのかと聞いてみたが、ないときっぱり言われてしまい、益々少し小さな香澄がいるような気がしてしまった。
 随分色々と話をしたが、十夜たちが戻ってくる様子はない。何か嫌な予感がする。そう思っても、ただ不安になっているだけなのかもしれなかった。

 そんな時、ドアがノックされ、漸く戻ってきたのだと紗綾は思った。けれど、善美の返事でドアを開けたのは鈴子であった。