今回の依頼人は田中善博(たなかよしひろ)、美和子(みわこ)夫妻である。
 彼らが直接霊障に悩んでいると言うよりは近隣住民を代表してのことのようだった。
 依頼内容は森の中の廃屋に巣くっているらしい悪霊を退治してほしいとのことだ。
 取り壊しに際して奇妙な事件が続いたことだった。解体にあたった人間が相次いで体調を崩したり、怪我をしたりしたということらしい。
 偶然だと言う者もいたが、元々、その森は自殺者が多発していたため、鈴子の元に連絡があったのだ。

 そして、田中夫妻はアシスタントとしての部員の同行を快く承諾し、多少遠出になることを考えて寝床まで提供してくれた。
 夫妻の間には、中学三年生になった娘があり、歳の近い紗綾達を歓迎した。外から客が来ることも珍しいのだと言う。
 その様は歓迎会というのも強ち間違いでもないかもしれないと思うほどだ。少なくとも田中家には歓迎されていると言える。