「まあ、いいわ。その内、思い出すから」
「すぐに思い出せない時点で終わってるっスよ。歳取るとイヤっスね」
「くそ生意気」

 なぜ、ここまでわざわざ挑発するようなことを言うのか。
 紗綾には圭斗がわからなかった。
 しかし、本人は涼しい顔をしている。

「たとえ、思い出したとしても、俺はあんたとは何の関係もないっスよ。これは断言できる。運命論なんかで縛られるつもりは微塵もないっスから」

 もしかしたら、圭斗には何か心当たりがあったのかもしれない。
 けれど、やはり、そこは自分が踏み込むことのできない世界だと紗綾は疎外感を感じていた。