「月舘は何て言ってたんだっけ?」
「な、何ですか?」
「歓迎会じゃなくて、何だと思うんだっけ?」
「……洗礼です」

 くるりと振り返って問いかけてきた嵐に、紗綾は小声で答える。
 幸い、魔女は携帯電話で誰かと連絡を取っている様子だった。
 だから、一行はこの何もない場所で待たされているのだが、そんなことが耳に入ったら紗綾とてどうなるかはわからない。
 洗礼でも試験でも何でも魔女は歓迎だと言い張るに違いない。

「まあ、そんな感じだよね。試練とかさ、楽しいものじゃないね。俺は監督だけど」

 嵐もうんうんと頷いているが、どこか他人事だった。

「試練でも何でもいいっスけど、こんなド田舎で何するって言うんスか。しかも、泊まりがけで」

 都会っぽさを纏う圭斗は理解できないと言った様子で言い放つ。
 問題は一泊二日の合宿ということなのだ。去年の歓迎会が日帰りだった紗綾も首を傾げた。