Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「……就職するっていうことはさ、自分の心に嘘を吐くことだよ」

 沈黙の後、嵐は言った。あまりに寂しい言葉だと紗綾は思う。
 それに対して、香澄は眉を八の字にした。

「教師のくせに夢も希望もないことを言いますね。ここにどれだけ夢と希望に溢れた若者がいると思ってるんです?」

 彼も決して軽々しく言っているわけではないようなのだが、進路指導には向かないだろう。

「自分の夢を叶えられる人間がどれだけいるか、知ってる? 本当に自分がなりたいものになれる人間がどれだけいるか……いや、まだわからないと思うし、わからない方が幸せなんだけど」

 夢を目指す学生がいたなら、本当に失望するかもしれない。
 大人としての経験談なのかもしれないが、教師という職業に就いた男が言うには不似合いだ。