Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「そう言えば、月舘、説明会の時に名前が間違ってるって泣きそうな顔してたっけ」

 嵐は思い出したらしい。パニックに陥っていた紗綾に声を掛けてくれたのは彼だった。
 泣きそうな、と言われれば恥ずかしさで自分の顔に更に熱が集まる気がするが、泣きたかったのは確かである。

「な、名前が間違ってたくらいで……?」
「だって、三つも間違ってたら、もしかしたら自分じゃないかもとか思わない?」
「み、三つ……」

 香澄は困惑しているらしかった。
 呆れられたかもしれないと紗綾は思う。けれど、大問題だったのだ。

「俺、あんまり名前間違ってたことないなぁ」
「私も」
「一文字はいつも、二文字もよくあるけど、三つは初めてだったよ」

 全く嬉しくない初めてである。
 はぁ、と香澄の溜息が聞こえた。