Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「他に部員いないんスか?」
「うん、いないよ。これだけー」

 圭斗の問いに嵐は極めて軽い調子で答える。
 部室ではいつもこうなのだ。

「廃部の危機とかないんスか?」
「大丈夫、良からぬ力が働くから。一年に一人入れれば問題なし」

 オカルト研究部に廃部の二文字は無縁である。
 三年の十夜、二年の紗綾、そして、一年の圭斗、これで今年も問題なしというわけだ。
 尤も、嵐がいる限り、たとえ、部員が一人でもこの部が消えることはまずありえない。

「この人が策士?」

 こっそりと問いかけてくる圭斗に紗綾は小さく頷く。
 若いが、落ち着きがあり、優しい印象のこの男は案外計算高いのだ。
 それでも香澄が恐れるほどではないと紗綾は思っていた。
 基本的に生徒には優しいのだ。悪ささえしなければ。自分に不利益がなければ、と言った方が正しいのかもしれないが。

「あ、俺、顧問の九鬼嵐、ちなみに月舘の担任の先生。よろしくー」

 にこりと嵐は笑みを見せる。
 だが、笑みを返した圭斗には何か含みがあるようだったが、紗綾にはよくわからなかった。