Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

 嵐と共に部室に戻れば、リアムは座布団に正座し、圭斗は雑誌を読んでいた。
 だが、一人、いつもいるはずの人間がいない。

「黒羽部長はまだ来てないんですか?」

 いつも十夜は誰よりも早く部室にいる。
 欠席や用事、単に遅れることもあるが、そんなことは稀だった。

「早退したよ」
「そう、ですか……」

 そうでないことを心のどこかでは願っていても、やっぱりと思う気持ちの方が強い。
 十夜が部室にいない場合のほとんどの理由はそれだ。

「ま、いつものアレって言うには、大したものじゃないけど、歓迎会に不参加は困るから大事をとってみたいな」

 いつものアレ、紗綾はそれだけでわかるようになってしまった。
 しかしながら、十夜が抱えているものの全てをわかっているわけではない。

「まあ、心配しなくていいよ。黒羽がヘタレなだけだから」

 嵐は笑っていたが、紗綾に笑えるはずもなかった。
 原因が自分かもしれないとも言わない。言ってしまえば、全てが壊れるような気がしていた。
 そして、この時、一番何かを言いそうな圭斗は黙っていた。
 単に雑誌に夢中だったのかもしれなかったが。