Catch-22 ~悪魔は生贄がお好き~

「なんか、面白そうだから」

 面白くないのに、そうは思っても紗綾には言えるはずがなかった。
 何とか理由を考えなければと思うものの、すぐに気の利いた理由を考え付くのなら、これほど苦労はしていないはずだった。

「ねぇ、先輩、名前は? 何年?」
「月舘紗綾。二年だよ」

 最早、ペースは彼のものだった。

「ふーん、紗綾先輩ね。俺は榊圭斗、圭斗って呼んでください」
「圭斗君?」

 馴れ馴れしい圭斗に特に嫌悪感もなかった。
 本人がいいなら……、とさえ思ってしまう。
 生贄は確保しなければならないが、そうしてはいけないように思う矛盾が紗綾の中に存在するのだ。

「んじゃ、部室に案内してください、紗綾先輩」

 圭斗はすっかりその気になっているようだった。
 どうせ、部室に行けば二人の悪魔がいる。
 結局のところ、判断するのは紗綾ではない。本人も生贄になると言っているのだから、連れて行くしかないだろう。