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「ねぇ、恋羽。歌ってよ」


「えー？嫌だ、また音痴って言うんでしょ？」


「まさか。そんなひどいこと言わないよ」


変わらず憎らしい程整った顔を惜しみなく晒して笑うその姿に見惚れてしまう。


少し意地悪を含んだその笑みも、私にだけ向けられていると思えば心が弾む。


「ねぇ、歌って？」


甘い毒のような痺れが脳を駆け巡り、私はなんだかんだ言って悠里の為に歌った。



「…悠里？歌、終わったよ？」


「ん？あぁ、まぁまぁじゃない？」


「えーなにそれ酷い！」


「はいはい。ほら、俺だけに笑って？」


あぁ、やっぱり。


だから私は歌いたくなかったんだ。


悠里は必ず私の歌を聞くと、何かを思い出して悲しい顔をするから。


それでも…


「恋羽が歌ってくれれば、俺はすぐに恋羽を見つけることが出きるよ」


必ず悠里はそう言うのだ。


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