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「恋羽。恋羽は忘れないでね俺のこと」


ふと、悠里は事あるごとに私にそう零す。


不安そうに瞳を揺らし、その中に映る私もまた泣きそうな顔をしている。


だから


「大丈夫。忘れたりしないよ」


そう言って、そっとそっと悠里の手を握りその手が離れる事のないように見つめる。


私はここにいるよ。そう悠里に感じて欲しいから。でも、もう一つは悠里の瞳に映る自分を見たくないから顔を下げて手を見つめる。


理由に理由を括り付けた私は、きっと醜い。

素直になれないダメな女。


「恋羽。顔上げて?」


フルフルと顔を横に振る私。

でも悠里にそれは想定内だったみたい。

何の躊躇いもなしにそっと手で私の顔を上げた。


「俺の事、心配してくれるの?恋羽。恋羽が俺を忘れなければ大丈夫」


俺はいなくならないから


悠里はそう、誰よりも美しい笑顔で

でも、誰よりも泣きそうな顔で


不確かで不安定でしかない未来へ私と自分を括り付けようとするのだ



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