「ねえ、広田くんはなんの部活に入ってるの?」
「帰宅部」
「へえ、帰宅部なんだ。
私はテニス部に入るの。」
「...」
何を聞いてもこの調子だった。
この人、人と関わるの嫌いなのかな?
「広田、サッカーしようぜ!!」
「おう。」
じゃれあいながら教室を出ていく広田くん。
意外...。
4月はずっとそんな調子だった。
でも、私が毎日一方的に話していると、だんだん会話が続くようになった。
「広田、次数学だよ。なんかもう数学ってどうにでもなれー。」
「ほんとそれだよな、山センも毎時間小テストしてでき悪い奴居残りとかはよ帰らせてくれよな。」
「ねえ、見て。これ美味しそうでしょ。」
「何これ」
「パンケーキ。私大好きなんだ。」
「こんな甘ったるそうな生クリームとかチョコとか、脂肪の塊だな。こんなもん食ってたらそのうち豚になるぞ。」
「ぶ、豚って、そんなこと言わなくてもいいじゃん。」
「あはは、怒った。」
「別に怒ってなんかいませーん」
学校で楽しみなのは、テニスをすること、友達とパンケーキのお店へ行くこと、広田と話すこと。
つまらない授業も、広田と話すと、すぐに時間がたつ。

