蘭蝶Ⅳ

優里「あたしね?弟がいるの。

今、本来なら小学6年生になったところ。

弟が小3のころ、友達が間違って不良たちにジュースかけちゃって。

それで相手の不良は、二人を路地裏に連れてった。

その不良も、悪気はなかったって言ってるわ。

その友達のことを庇うって前に出た弟を、不良は突き飛ばした。

それで、頭を強く打ったの。

しかも打ちどころも悪くて、意識不明の重体。

今もあれから一度も目を覚まさずに眠ってるの。

もう、起きるか起きないかも分からないって」



そう言ったときの優里の顔が、泣きそうだった

きっと、弟さんのことが大好きなんだと思う

優里がまた悲しそう、でも苦しそうに続ける



優里「その不良も、何度も謝ってきた。

こんなことするつもりじゃなかったって。

ちょっとからかうつもりだったって。

きっと、根はいい人だと思うの。

何かあって不良になったんだろうなってことも、なんとなく分かった。

でも、どうしてもあたしは『はいそうですか』とは言えなくて。

家族も最初は頑なだったけど、一年たったあたりで相手を許したの。

その不良は、しょっちゅうお見舞いにきてはあたしたちに頭を下げて。

その思いが両親に届いたってこともわかってる。

でも、あたしはどうしてもその不良が許せないの。

たとえ、家族が許したとしても」


そう言う優里は、すごく苦しそうな表情だった