車中に緊張が走る。
沈黙を破ったのはまたもや、久保さんだった。

「ごめんね、急に。もう少し一緒にいたい。」

「はい。大丈夫です‼」
もう、口から心臓が出そうだった。

「ちょっと、外に出ませんか?」
車中の雰囲気に耐えきれず、私はドアを開けた。風が私の髪をなびかせる。久保さんも車から降りて私の隣に立った。

「妃咲ちゃん・・・」

「は、はい!」
いつもより真剣な声音の久保さんに
ドキっとした。次の言葉を待つ。

「俺さ、妃咲ちゃんのことが好きです。
今の彼氏と別れて俺の彼女になってほしい。」
ぇっ、ぇっ、えーーーっ⁉
4度目の思考回路ストップ。
・・・でも、心のどこかで予測していた私がいて答えは口からすんなり出た。
この時は、もう彼氏への罪悪感を忘れていた。

「私も久保さんのことが好きです。
よろしくお願いします。」
答えと同時に久保さんにぎゅーと抱きしめられた。またもや、口から心臓が出そうだった。
そして、自然と互いの顔が近づき唇がくっつきそうになった。けれど、寸止め。

「キスは妃咲ちゃんが、彼氏とちゃんと別れてからにしよう。」

「・・・は、はい。」
せめてものケジメと言う意味だ。
凄く残念な気持ちになった。

「ぁあー、でも我慢できない‼」
と、久保さんが言う。

「私も我慢できません・・・」
私も素直に答える。
そして、抱き合っている間にお互い理性なんて消えてしまった。

「やっぱり、我慢できない・・・」
久保さんの唇が軽く私の唇に触れた。

わずかに開いている唇の隙間から、久保さんの舌が入ってくる。

「・・・んっ」

奥へ奥へと私の口内を犯す。
私も反応して、自分から舌を絡ませた。

「んっ、ふあっ・・・」
どちらのものか分からない唾液が絡み合う。ちゅ、くちゅ・・・月夜の下、水音が響いた。

「英二って呼んで、妃咲」

呼び捨てされてドキドキしながら
私も答えた。

「英二・・・」
もう、どうにでもなってしまいたかった。頭の中は久保さんでいっぱいだった。