「あっという間だな、5年って」
「…つい、この前のことのように思うな」
「って言うかむしろ、昨日くらい?」
「分かる分かる。」
ははは、と笑う奏多。
「それより奏多、咲希ちゃんとはどうなの?」
俺の質問に、翔ものってくる。
「…同棲してるんだろ?結婚はしないのか?」
「翔まで何言ってだよ(笑)」
「はいはい、はぐらかさなーい!」
「結婚ね……。そろそろ、したいなとは考えてるかな」
咲希ちゃんを思い出したのか、
愛おしそうな顔をする奏多。
幸せそうな2人が安易に想像できる。
「いいよなー!俺らも早く相手見つけねーと…。な、翔!」
「……」
「え?なにその沈黙」
翔の顔が少し赤いのは、ビールのせい?
それとも……
「翔、職場でいい人見つけたんだよな(笑)」
「まじで!?なにそれ!俺聞いてない!!」
「…亮二に言うとうるさいから」
なんだよその理由!
でも、翔の顔は幸せそうで、
純粋に羨ましいって思った。
「ちぇっ。俺だけじゃんかよ〜」
「うふふ。亮二くんも、すぐにいい人見つかるわよ」
「希さんだけですよ、そんなこと言ってくれるの!」
ビールを持ってきてくれた希さんにそう言う。
「みんな、もう結婚なんて考える歳なのね」
本当、早いわね、と言う希さんの頭の中には、
瑞希の笑う姿があるんだろうか。
5年前から何も変わらない、
あの、瑞希の笑顔が。

