「ん?どうしたの?」


みっくん、


「…怖い、ですか?」


アメリカに行くこと。


「心臓移植、受けること…」


怖い、の?


だから、そんな消えそうな笑顔なの?


私の質問に、目を大きく開くみっくん。


「…瑞希?」


「……幸望ちゃんには、隠し事できないね」


まいったな、なんて言って笑ってるけど、全然笑えてない。


私が見たい笑顔は、そんな苦しそうな笑顔じゃない。


辛そうな笑顔じゃないんだよ……?


「アメリカに行く途中で、容態が急変したらどうしようとか、ドナーが見つからず死んでしまったらとか……。嫌なことばかり考えてしまう。」


「瑞希…」


「自分が一番信じていないと駄目なのに、どうしても、怖いんだ。ここで、みんなと一緒に、デビューしたい……バンドしたいんだよ………」


みっくんの全身から、


"死にたくない"って叫ぶのが聞こえてくる。


「どうせ、あっち行っても死ぬなら、ここで死んだほうが……」


「みっくん!!!」


それ以上、言わないで。


それ以上言ったら、それこそ、


自分が自分じゃなくなる。


自分を必死で奮い立たせているものが、


全部崩れてしまう。


「駄目、です。それ以上、言わないで」


「…幸望の言う通りだ。それ以上言うな、瑞希。」


「"どうせ死ぬなら"なんて言わないでよ瑞希」


「瑞希は、死なないよ」


そうだよ。


「私たちが、ここで待ってるんだから」


お願い。


「生きて、帰ってきてください」