そして、次の日。


みっくんがアメリカ出発する、前日。


私たちはバンドの練習の後、


みっくんの病室へ向かっていた。


「…あっという間だな」


「そうですね……」


3日なんて、本当にあっという間。


明日には、もう、アメリカへと出発するなんて。


考えられない。


『コンコン』


「どうぞ」


中央病院東棟8階。


"長谷川 瑞希"と書かれた813号室をノックすると、


中からみっくんの声が聞こえてくる。


大きく深呼吸をして、ドアを開ける。


「…いらっしゃい」


荷造りを終え、ベッドの上で外を眺めていたであろうみっくんが、


私たちの方を見てそう言う。


その顔はどこか不安そうで。


辛そうで、苦しそうで。


触れてしまうとすぐに壊れる、


脆いガラスのような感じがした。


「瑞希、調子はどうだ?」


「さっき診察してもらったけど、大丈夫そう。このままならアメリカにも行けるだろって」


「そっか」


ほっと息をつく奏ちゃん。


「あっちで無理するなよ〜?」


「分かってるよ」


「…お前とは違う」


「翔ひどいってば!!」


亮くんがふくれっ面をするのを、


みっくんは今にも消えそうな笑顔で見ている。


手を伸ばせば届く距離にいるのに、


どうして彼が消えてしまいそうに見えるんだろう。


本当に、触ったらあっという間に消えてしまいそうな。


たとえるなら、そう。


まるで、雪のよう。


「みっくん……」


消えないように。


消えてしまわないように。


彼の名前を呼ぶ。