いつまでたっても涙が止まらない私を、


先輩たちは呆然と見ている。


「翔、もうこうなったら…」


亮くんの言葉に大きく息を吐く翔。


「…仕方ないか」


そう言って私の前にしゃがみこむと、


「ソファーに座れ」


と言って、私の腕を掴んで立たせる。


「は…い……」


何とかソファーまで行って、座る。


「とりあえず、落ち着いて」


奏ちゃんが私にタオルを渡す。


すみません、と言って受け取り、


溢れ出す涙を吹いた。


落ち着け、私。


翔輝と約束したでしょ。


"ちゃんと話を聞く"って……


ゆっくり呼吸しながら涙を抑える。


「そろそろ大丈夫そうかな?」


亮くんの言葉に頷くと、先輩たちもソファーにに座った。


「…じゃ、話すから、ちゃんと聞いておけ」


「…はい。」


奏ちゃんのタオルを握りしめながら、


翔の顔を見た。


「…路上ライブの次の日、瑞希は両親に連れられ病院に行った。すぐに精密検査し、心臓の病気であることが判明した。しかもかなり進行していて、手の施しようがないくらいらしい。」


手の施しようがないなんて……


「…瑞希と同じ大学に行ったヤツに話を聞くと、入学してすぐくらいから時々胸を押さえて苦しそうにしてたらしい。…それを聞いて俺も、瑞希のそういう姿を何度か見たことがあった」


「…でも、いつも大丈夫だって言ってたから、対したことないんだと思ってたんだ。…だけど………」


苦しそうに笑いながら、「大丈夫だよ」と言ってるみっくんを、簡単に想像出来た。


だって、そういう人だから。


自分の苦しみより、他人の苦しみを和らげようとする人だから。


みっくんのことを思うと、また涙が出て来そうになる。