そう思ったのに。
「幸望ちゃん、笑えてない」
真剣な顔の、みっくん先輩。
どうして?
今、私、上手に笑えてたはずなのに。
なんで先輩は気づくの……?
「………あの時は、詳しく聞かなかったけど、
歌うことに何かあるの?」
優しく、そう言う先輩。
歌うように説得されたときは、言えなかったけど。
今なら、先輩に聞いてほしいって思う。
…なぜだか分からないけど。
きっと、いつもの笑顔で、全部飲み込んでくれる。
そう思った。
「………長くなるし、重たい話だけど、
聞いてくれますか?」
私がそうたずねると、先輩はうなづいた。
そして私は、朱里以外の人に、
初めて自分からその事について話し始めた。

