でもその時、視界に入った人物によって喉まで出てきていた言葉を呑んだ。

「颯斗〜?」
桜田先輩はゆっくりと声のする方へ振り向く。

その人物を目の前にして私は思わず声を漏らした。
「松原……」

さーっと肩の力が一気に抜けた。この人はなんでいつもこう、絶妙なタイミングで現れるのだろう?

彼女は別にまんざらでもなさそうに鼻で笑った。
「先輩に向かって呼び捨てとはいい度胸よね」