「ごめん、今日急遽レッスン入っちゃって、先帰ってて?」
申し訳なさそうに両手を顔の前で合わせる愛梨。
「そっかあ、頑張ってね」

頑張れ、愛梨。
私は愛梨を見送ると一人淋しく下駄箱に向かった。スリッパを脱ぐと下駄箱に入れ、靴を取り出すと乱暴に床に置いた。

ガラス越しに外を見るともうすっかり暗かった。
なんで冬の夜ってこんなに寂しいんだろう。誰か人肌が恋しくなるんだろう。