「んー、よくってほどは行かないかな?この前颯斗と行ったけど」

「颯斗」と言うときなぜか私の方を向く光貴君。その言葉に妙に反応してしまう。

はあ……

周りの乗客のかすかな喋り声、食べ物の袋を開ける音、新聞のかさっという音。
ざわざわしている中からその言葉の瞬間だけ何もなくなるかのように、綺麗に聞こえる。

「…コンクールだったんですか?桜田先輩と行ったときは…」
「いや、大学の講習にね」