ドクドクと太鼓の様に鳴る心臓
棒の様になった足は、小刻みに震えている
辿り着いた展望台には、誰もいない
ただ真っ暗な闇が、そこにあるだけ
展望台の小さなベンチに力なく腰を下す
いつもヨシキと並んで座ったベンチ
優しくその上を撫でて、そっと瞳を閉じた
目を閉じたその先には、ヨシキがいた
両手を広げて、ニッコリと笑っている
大きな胸に飛び込むとギュッと抱きしめられた
広いヨシキの胸
力強い腕
爽やかなシトラスの香り
ニッコリ笑って私の髪を宝物の様にしてすく
透き通ったグレーの瞳が私を捉える
そして、優しく私の前髪をかき分けて額にキスを落とす
――〝ただいま、ジュリ″――
ヨシキの声が聞こえる



