「今すぐ答えを出さなくていい」
逆立った毛を撫でる様に、優しく話すヨシキ
俯いた私の髪を一度優しく撫でた
でも
「夏休みの間、下見でイギリスに行ってくる。その間に考えておいて」
休む間もなく襲い掛かるヨシキの言葉
未だに受け入れられない現実が、私の心の中で暴れ回る
「夏休みって・・・もう来週じゃん」
「もっと早くに話したかったけど・・・」
私の言葉にヨシキが俯く
その言葉に、思い当たる節を見つける
―――そっか
私が話を聞こうとしなかったからか・・・・
私が止まっている間も、ヨシキはどんどん前へ進んでいたんだ
立ち止まって後ろばかり見ていたのは、私だけ
本当に
置いてきぼりだ
「答え・・・」
思わず呟いた声は、擦れていた
別れるか。
別れないか。
「泣かせてばかりでごめん」
長い睫毛を伏せて私の手を握るヨシキ
温かくて大きな手が、震える私の手を優しく包んだ
それからヨシキは公園に私を残して帰って行った
きっと私に考える時間をくれたのだろう
受け入れがたい現実の中
私はただ茫然と池を見つめた



