「泣いてると思った」
ヨシキは悲しそうにそう言って、私の真っ赤に腫れた目をじっと見つめている
くっきりとした二重瞼の奥の、グレーと青色が混ざった様な綺麗な瞳に私が映っている
「泣かせてるのは・・・・俺か・・・」
自嘲気に笑ってそう言うと、すっと手を下げて私を優しく抱きしめたヨシキ
爽やかなシトラスの香りが私を包む
「――話がしたい」
力強くそう言うヨシキに逆らう事なんてできず、コクンと力なく頷いた
◇
それから、ヨシキの後をトボトボとついて行った
なんだか一歩一歩進むごとに、2人の別れに近づいている様な気がした
広いヨシキの背中
もうあの背中に抱きつく事は、できなくなるんじゃないだろうか
そんな事ばかり浮かんで、涙がまた溢れた
しばらくして、初めて一緒に帰った日に寄った公園に着いた
以前の様に小さな池のある場所へ行き、ベンチに腰を下ろしたヨシキ
それでも、私は何故か座る事ができずベンチの横で立ち尽くした
ここに座れば、別れへのカウントダウンが始まる様な気がして―――
そう思うと、座る事ができなかった
私の精一杯の抵抗
でもそんな抵抗も虚しく、下を向いて立ち尽くしている私の手をとって、なだめる様に私を座らせたヨシキ
きっと、ヨシキの前で私は幼稚園児の様なものだ
私が座ってからも、しばらく何も話さないヨシキ
どうやって、別れを切り出そうかと考えているのかな――?
胸が苦しくて息ができない
今すぐにでも逃げ出したい気持ちの中で、ギュッと手を握りしめてヨシキの言葉を待った



