「あの白いモヤみたいの何?」
天井一面に広がる星空の中に、霧のような白いモヤが川の様に映っている
「あぁ、あれは天の川だよ。それを挟んで向かい合って輝いている星が、七夕の物語に出てくるアルタイルとベガだ」
空に一際輝やく2つの星を指さしているヨシキ
「それって織姫と彦星?」
ヨシキの言葉に小さい時にお母さんに読んでもらった絵本の話を思い出す
――天の川の畔に住んでいた、働き者の織姫
せっせと仕事ばかりしている娘を不憫に思った父の天帝は、天の川の西に住んでいる青年、牽牛と結婚させた
2人は愛し合い幸せな日々を過ごした
しかし、仕事をせず牽牛に夢中の織姫を見かねた天帝は怒り2人を引き離した
そして、2人は1年に1度しか会えなくなってしまった
どこか、悲しいお話
「織姫と彦星は寂しくないのかな」
絵本の織姫と彦星のお話を思い出して、そう呟いた
するとヨシキは、小さく座っていた私を抱き寄せた
「そうだね、きっと寂しいだろうね」
「――うん」
「俺はきっと耐えられないだろうな。でも1年に1度だけ会えるから、その日の為に何でも頑張れる気がする」
「2人はすごく愛し合ってたんでしょ? きっと私ならヨシキから離れるなんて耐えられない」
織姫の気持ちを考えると胸が張り裂けそうだった
愛する人と離れ離れになるのは、きっと身を裂かれるより辛い



