勝負下着

2人きりのエレベーター

編集部は12階


『…なぁ、沙奈。なんで最近連絡くれないの?』


「会社ですよ。個人名で呼ばないでください。編集長」


『誰もいないだろ。何か怒ってんの?』


「怒ってません。プライベートなことは会社ではやめてくださいって今まで何度言ったことか」


『だから誰もいないだろうって。沙奈、何そんなに怒ってんの』


「怒ってないわよ」


『……怒ってんじゃん。何?……まだ気にしてんの?嫁のこと』


「まだっていうかずっと重荷だし、気にするとこだから。奥さんにも子供にも負い目なくよく『連絡くれ』なんて言えるわね、裕介さん」


『負い目がない訳じゃないよ。それでも、俺は沙奈が好きなんだよ』


エレベーターの壁に手をつかれ、軽くキスをされる。

「………あなたはずるいです。編集長」


『さ、今日も仕事だ。張り切って行こう!』


エレベーターが12階に着いていた。