Cold phantom

それから泥のように寝ていたのか、起きたのは昼頃に入ってすぐの時間だった。

分針と時針がほぼ真上に立っていたのを確認し、眠気を無くした意識下に目もさっぱり開いていた。

頭痛もすっかり消え、ベッドから立ち上がり伸びをする。

長い眠りからくる倦怠感が、伸びを終えた体から欠伸となって空気として抜けていく。

学生としては中途半端な時間に起きてしまった。

今から学校に行くとしても気が引ける。それどころか制服でこの時間帯に外を出歩くのも気が引ける。

外は生憎の曇りのようで、かろうじて太陽が顔を出してはいるものの、時折雲に隠れるようになっていた。

本当なら今すぐ帰ったほうが無難のなのかもしれないのだが…。

私は何をするわけでもなく、部屋を出て廊下の途中にある大窓から外を眺めた。

コの字になっている病院の中庭が、この窓から見えた。

特に真新しいものがあるわけでもなく、以前のまま人気の多くない中庭が見えていた。

人気は無いものの整備は行き届いていて、花は枯れておらず、石造りの池も濁ってはいないので、気分転換にやってくる人も少しだけいる。

そんな中庭を横目に歩いていると、私の歩いてきた道の先の階段から見知った人物か上がってきた。

「こんな所にいたか。」

「先生?」

長池先生が私を見るなり近づいてくる。

「病室にいないから探してたんだけど、すぐ見つかって良かったよ。」

「私を探してたんですか?」

私がそう聞くと、先生はおもむろにジーンズのポケットをまさぐって中の物を取りだし、右手で降って見せた。

ジャラジャラと軽い金属音が鳴っている。鍵のようだ。

「俺も今帰るんだけど、乗っていくかい?」

「えっ、もう帰っても良いんですか?」

「今は普通に歩けてるみたいだし、貧血の類いにも感じなかった。顔色も良くなったし、1日安静にすれば明日にはすっかり治ってるはずだよ。」

油断は禁物だけどね、と付け加えて再度鍵を鳴らしてみせた。

帰宅途中で倒れられても困るからと言う事で送ってくれるのだろう。

ありがたい申し出だが・・・私はその誘いを断った。