帰り道、夏来は住宅街を歩いていた。
帰宅部の夏来は帰りが早いため、まだ外では遊び足りない小学生が走り回っている。
「恨み買って殺されても…」
霧生の声が脳内で反響する。
潤は恨みを買うような奴じゃない。誰にでも好かれる。
言い聞かせるように心の中で呟くが、不安が拭いきれなかった。
ジャア、オレハジュンヲスキ?
水溜りに映った自分が問いかける。
潤のことは嫌いではない、と思う。学校で唯一親しく話せる奴だ。まあ、他の奴と話せなくなったのは殆ど潤のせいではあるが。
だが、好きかどうかと聞かれると、途端に分からなくなる。
「…しょうがないか、オスゴリラ、だもんな。」
呟いて、足元の石を蹴っ飛ばす。
石は綺麗なフォームを描いて、

夏来の前にいたいかにもヤンキーな容姿をした集団の真ん中の一人のおでこにクリーンヒットした。
「☆□▼◆◉⁉︎」
驚いて口から悲鳴のような呻きのようなよく分からない声が出た。
「いってぇなぁ⁉︎」
おでこに石が当たった金髪のつり目男はそう怒鳴ると夏来をギロリと睨みつけた。
「ち、違、わざとじゃなくて」
「わざとじゃなかったら許されると思ってんのか?」
あっという間に金髪とその愉快な仲間たちに取り囲まれる。
閑静な住宅地は、時間も微妙なだけに人影は無く助けてくれそうな人もいない。
「おい坊主、慰謝料として金寄越せよ。」
そう言って男は下衆な顔で笑った。しかし、どうも聞き捨てならないとこがある。
「待てよ、俺は坊主じゃなくて女だし、金なんか無いんだけど。」
出来る限り笑顔を作って金髪たちとの意思疎通に試みるが、無駄なようで。
「嘘も大概にしろよ?お前みたいなチンケな猿が女な訳ねぇだろ?つか、はよ金寄越せや。」
始めから金貰うつもりだったんだろうが!と叫ぶのを我慢してどうにか笑いを作ろうとするが、上手くいかない。