「嫌な奴ですね、稲葉さんは。」
ふと、隣から声がした。霧生だ。真っ正面を向きながら話しているがおそらく夏来に話しかけているに違いない。
「どこがだよ。そんなこと言ってるとクラスの女子にハブられんぞ。」
軽口を叩いてやると、「佐倉さんに言われたくありません。」と睨まれた。
「授業にも出席せず、素行不良。努力もしてこなかった人間なのに人が欲しがるものを全て与えられている。」
たんたんと、本でも読み上げるように霧生は呟く。
「恵まれた【才能】。そんな生まれつきのもので人とはここまで違う。ズルすぎると思いませんか。あれでは、恨みを買って殺されても文句は言えませんね。」
言葉だけではまるで潤に恨みを持っているように聞こえるが、明らかに違う。
まるで、誰かの考えを眈々と読み上げているようだった。
「霧生…お前一体…。」
そう言えば夏目さんって呼べとか言ってたっけ?と脳の冷静な部分が問いかけるが、体は強張っていた。
何故、転校してきたばかりの霧生が潤のことをここまで詳しく知っているんだ?
「知りたいですか?」
くすり、と。
酷く妖艶な、それでいて儚い笑みを霧生
は零した。
真っ暗な瞳には底無しの闇が映っている。
真っ黒な、闇。
夢を、希望を、未来を、愛を、全てを奪ってしまうような闇。
「また今日も稲葉君はお休みですかぁ⁉︎」
宮澤先生の泣きそうな悲鳴にハッとする。もう霧生は夏来のことを見ていなかった。感情の無い瞳は真っ正面を見つめている。
こいつは、危ない。
汗でじっとりと濡れた手を握りながら、夏来は戦慄しているしかなかった。
ふと、隣から声がした。霧生だ。真っ正面を向きながら話しているがおそらく夏来に話しかけているに違いない。
「どこがだよ。そんなこと言ってるとクラスの女子にハブられんぞ。」
軽口を叩いてやると、「佐倉さんに言われたくありません。」と睨まれた。
「授業にも出席せず、素行不良。努力もしてこなかった人間なのに人が欲しがるものを全て与えられている。」
たんたんと、本でも読み上げるように霧生は呟く。
「恵まれた【才能】。そんな生まれつきのもので人とはここまで違う。ズルすぎると思いませんか。あれでは、恨みを買って殺されても文句は言えませんね。」
言葉だけではまるで潤に恨みを持っているように聞こえるが、明らかに違う。
まるで、誰かの考えを眈々と読み上げているようだった。
「霧生…お前一体…。」
そう言えば夏目さんって呼べとか言ってたっけ?と脳の冷静な部分が問いかけるが、体は強張っていた。
何故、転校してきたばかりの霧生が潤のことをここまで詳しく知っているんだ?
「知りたいですか?」
くすり、と。
酷く妖艶な、それでいて儚い笑みを霧生
は零した。
真っ暗な瞳には底無しの闇が映っている。
真っ黒な、闇。
夢を、希望を、未来を、愛を、全てを奪ってしまうような闇。
「また今日も稲葉君はお休みですかぁ⁉︎」
宮澤先生の泣きそうな悲鳴にハッとする。もう霧生は夏来のことを見ていなかった。感情の無い瞳は真っ正面を見つめている。
こいつは、危ない。
汗でじっとりと濡れた手を握りながら、夏来は戦慄しているしかなかった。
