「転校早々虐めたりしたのー?そりゃ嫌われるよ。」
ケタケタと笑う潤の鳩尾に拳を叩き込むと、オグフッとか言う奇妙な声を漏らしてうずくまった。
「そんなんするわけねーだろ…。始めて会った時から敬遠されてる気がすんだよ。」
息も絶え絶えになっている潤を見下ろし答えると、潤はその綺麗な顔を僅かに歪ませながら夏来を見上げた。
「こんな暴力男…いや、オスゴリラと仲良くなりたい奴なんていないだろ…。」
踵落としの要領で潤の頭に制裁を下すと、潤はぐぇぇっと言う奇妙な声をあげて潰れた。
「雑魚め。」
冷たく言い放ち席につくと、すぐに周りからヒソヒソと声がし始める。
「暴力女。」
近くの一際派手なグループの中の女の子が夏来に向かって聞こえるように呟いた。
夏来は聞こえなかったふりをして無視する。下手に関わると厄介な事になるのは目に見えていた。
「いってぇー…流石なっち、見事な踵落とし!でも流石に毎日毎日やられてたら俺死んじゃうかもー。」
そう言ってヘラヘラ笑いながら前の席に潤が座る。相変わらずタフな奴だな、と半ば呆れ、半ば感心しながら見ていると、予鈴が鳴り始めた。
「おーっと、次みやちんの授業だっけ?ちょっとらサボってくるわー。」
みやちんとは宮澤先生の事だ。宮澤先生の授業は、分かりやすくて楽しいことに定評があるが潤は苦手なようだ。
「宮澤先生、いつか泣くぞ?」
「泣いたら写メって送っといてよー。」
申し訳程度に引き止めてみたが案の定失敗した。潤は周りの女の子達に笑顔で手を振りながら教室を出て行った。