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「すいません、面会したいんですけど」
「……どちら様ですか?」

いかにもいかつい警察官が俺を睨む。

「佐蔵芭風磨です。
こちらは紫鉢美紅です」

するとその警察官は目を丸くして美紅を見た

「もしかして……
紫鉢渉(わたる)さんに
会いに来たのですか?」

渉とはきっと美紅の親だろう。

「はい、そうです」
「驚いた……
まさか娘さん聞いてないのかね?」
「……え?何をですか?」

不思議そうに俺を見る美紅。

「彼は、紫鉢渉さんは……
3ヶ月前肺がんで亡くなりましたよ?」

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何も言わないまま俺達は刑務所を出る。

__「紫鉢さんは入所した時から持病を患っていて
1年前から刑務所の中で入院してました
3ヶ月前にはもう全身にがんが点差していて
翌日にはもう……」___

そんなさっきの言葉が頭の中でループする。

すると美紅がいきなり立ち止まった。

「なんで……なんでだろう……」

美紅はそのまま静かに涙を流している。

「大嫌いなのに……
死んでくれて嬉しいのに……
なんで涙が出てくるんだろう……」
「美紅……」
「二度と会わないって思って嬉しいのに……
なんで涙が止まらないの?
どうして……頭の中には
小さい時にたくさん遊んでもらった
記憶しかないのよぉ……」

ついに美紅はしゃがみ込んで
声を出して泣き叫ぶ。

そんな美紅を見てらんなくて美紅を支える

「どうしよう……
もう誰もいないよ……
誰も家族がいないよ……
幸せだったのに誰もいなくなっちやった……
怖いよ、どうしよう……寂しいよ、
怖くて怖くてたまらないよぉ……」

美紅は俺に抱きついてわんわん泣く。

「ついに一人ぼっちだよ……
一人ってこんなにつらいんだね……
ずっと一人になりたかったのに……
なんで……」

俺はただ黙って
美紅を抱きしめることしか出来なかった。