「……ざけんな」

激痛と共に体を震わせるような声が耳に響く

そして私は彼に腕を掴まれ
そのままどこかにグイグイ進んで行く。

「……痛いよ」
「……」

彼はどこか暗い路地裏に入って行った。

「痛い!!離してよ!!」

そして彼は私を強引に硬いコンクリートの
壁に背中を押しつける。

「痛っ……」

反抗しようとして彼を見るが
その瞬間体が凍りついた。

だって彼は今まで見たことないくらい
私を睨みつける。

その顔に怒りが込められているのは
誰でもすぐわかる。

「風、磨……?」

名前を呼んでみてもその顔は緩む気配がない

そしてそれに反応して
私の体は怖いくらい震え出す。

「死ぬなんて絶対言うな!!」

そして今まで聞いたことない怒鳴り声に
涙が出てくる。

「残されたの人のことを考えろ!!
美紅がいなくなったら俺はどうすればいいんだよ
俺が美紅を守れなかったんだ
美紅が消えたら俺に何もなくなんだよ!!
絶対に死ぬなんて言うな!!」

荒々しく怒鳴る風磨に素直に謝りたかった

けれど……
私はもっと自分を傷つけるんだ。

「どうして?風磨には関係ない!!
私が死のうと生きようが風磨に関係ないでしょ!!
だって私達はもう他人なんだから!!
どうして風磨はそうやって私を止めるの?
どうして私を苦しませるのよ!!」
「関係ない訳ねーだろ!!
関係あるんだよ!!
美紅のことが好きだからに決まってんだろ!?」

その言葉に目を大きくする。

だってそんなこと一度も考えなかったから。

「どうしようもないくらい美紅が好きなんだよ。
だからな、美紅が俺から離れるのも怖いし
美紅が消えるのはもっと怖いんだよ!!」

そしてそのまま優しく私を包み込む。

「俺が美紅を必要としてるんだ」

その言葉で私の心は救われた。

「美紅は一人じゃない。俺がいる」

だからその言葉を信じようって
どうしても思っちゃうんだ。

「だからもう、死ぬなんて言うな」

私の目からは異常なくらいの涙が
こぼれてくる。

体の水分全て使い果たすくらい。

私にはやっぱり、風磨が必要……

私はゆっくりと風磨に手を回す。

「ごめん……
ごめん、ごめんなさい」
「……もうわかったから」

風磨は私の頭をそっと撫でてくれる。

「本当にごめんなさい……」

風磨は私をキツくキツく抱きしめる。

やっぱり私、どこかで風磨を求めてる。

だって……

「好き……」

私の声はいつもポロリと
こぼれてしまうんだから。