空を飛べたら



「佐山っちー。さっきどこ行ってたのさ」
「あー? ん~。秘密」
「秘密って」

声を上げて笑う二人組み。
一人の声は、さっき屋上で聞いた声。

佐山っていうだ。
同じ学年だっけ?

顔をちゃんと見たくなって、二人組がいる方を振り返った。

佐山の視線は、一緒に話をしている相手じゃなく、私を見ていた。

っ?!

暗闇で、行き成り背後から驚かされたように私の心臓が跳ねた。
バクバクと激しく動くその心臓部分に手を当てて、動きを止めようと試みる。

飛び立とうとした瞬間に、声を掛けられたって平気だったのに。
地面にいる今は、その視線が酷く痛くて、苦しい。

逸らせずに。
心臓を押さえ。


鳴りやめっ!!


心の中で、叫んだ。