「佐山」 「ん?」 目を閉じたまま、私は佐山に話しかける。 「ありがとう。私、空を飛ぶかわりにもっと、笑ったり怒ったりしてみる」 「うん」 佐山は、多くを訊かない。 あの時、ブロンドに見えた髪の毛は、きれいな茶色だった。 鳥には、この色がどんな色に見えるんだろう。 空を飛べない私には、茶色にしか見えない。 だけど、その茶色がきれいって思える感情が人にはある。 私たちには、喜怒哀楽がある。 もっと怒って、もっと笑おう。 この空を飛ぶかわりに――――。