「……え?」


雄斗さんの目が大きく開かれていた。


してやったり。あたしは目の前の大人に優越感を覚えた。


「雄斗さんの彼女になりたいです」

「大人をからかうのはやめろや」


雄斗さんはあたしから顔を背けてビールの缶に口づけた。


冗談だと思ってるんだ。子供扱いして。


気に入らない。確かに雄斗さんから見ればあたしはまだまだ子供だけど、まだ未成年だけど、恋に年齢なんて関係ないじゃない。


そういう経験はしたことないけど、むしろ彼氏すらいたこともないけど、体が熱くなるこの気持ちがどんなものか知っていないわけがない。


「ごめん、今日は帰る」


何も言えなくて俯いていると、雄斗さんは立ち上がって部屋を出てしまった。


兄貴はあたしの横でいびきをかいて寝ていた。


終わったな。一瞬でそう悟った。


初対面だったのにがっつきすぎたのかも。


軽い女だと思われたかもしれない。あたしはひたすらこの時の自分を恥じた。


もう会わないだろう。そう思っていたのに、何も知らない兄貴はその三日後再び雄斗さんを連れてきた。


雄斗さんの姿を見て思わず部屋に篭っていたのに、不意に兄貴に呼び出されてなぜかあたしも一緒に飲むことになった。


雄斗さんに謝ると、「俺も酒飲ませてごめんな」と逆に謝られた。


「いくら雄斗さんでも、俺の可愛い妹に手出したらぶっ飛ばしますよ」

「あほか。お前の妹なんか、頼まれても出さんわ」


そんな会話にあたしは苦笑するしかなかった。