11歳も差があるあたし達が出会ったのは三ヶ月前。


今年28になる兄貴が、大学時代のゼミの先輩と言って自宅に連れて帰ってきたのが雄斗さんだった。


二人は兄貴の部屋に篭って飲み始めたけど、しばらくして隣のあたしの部屋を覗いてきたのは雄斗さんだった。


「仁那子ちゃんの兄貴……寝ちゃったんやけど」


二重のたれ目に、色素の薄い唇。優しそうだけどあまりパッとしない見た目とは裏腹に、第二ボタンまで開けられたワイシャツからは鎖骨が覗いていた。


首筋が綺麗で、ワイシャツを着ていてもわかる引き締まった体が、大人の色気を放っているようにあたしには見えた。


不覚にも体が熱くなるのを感じた。


あたしは兄貴が寝ていることをいいことに、部屋に残っていた酒を飲みながら雄斗さんといろんな話をした。


育ちは関西だけど大学から関東に来たから、関西弁と標準語が混じって変な日本語になってしまっていること。


大学までサッカーをしていて今でも社会人チームに所属していること。


カクテルやビールは好きだけどなぜかチューハイが飲めないこと。


「雄斗さんは、彼女いないんですかあー?」


お酒を飲んだのはこれが初めてではなかったけど、雄斗さんよりはだいぶ弱い。


兄貴が嫌がらせで用意したのであろう缶チューハイを三本空にした後、四本目の缶を開けようとしたら雄斗さんの手が伸びてきて止められた。


「もう終わりな」

「大学生を舐めないでくださいよおー。てか雄斗さん、質問に答えなさいっ」

「いない」

「じゃあ、あたしが立候補してもいいですかあー?」


雄斗さんの手があたしから離れた。