背中から伝わる衝撃で、あたしの理性が戻ってきた。


「わかった、わかったから…………」


肩を掴みながら雄斗さんはうなだれていて、あたしからは顔が見えない。


……やばい。


そんな雄斗さんを見て、半端ない罪悪感があたしの中で生まれた。


「ごめんなさいっ…………」


なんてことをしてしまったんだ、あたしは。


本能のままに雄斗さんを襲うとか、獣か、あたしは。


顔面蒼白とはまさにこの状況だ。


「……ばか」


雄斗さんが呟く。


「……すみません」


はい、認めます。あたしはばかです。ばかですみません。


「そうじゃなくて」


ため息をついた雄斗さんが顔を上げる。わずかに瞳が潤んでいた。


「俺を煽ってどうすんの」


一瞬、ほんの一瞬、あたしの唇と雄斗さんのそれが重なる。


はっとしたときは既に二人には距離ができていて、あたしは雄斗さんに睨まれていた。


それよりも、一瞬感じた唇に意識がいく。


唇って…………柔らかいんだ。


手で口元を押さえる。


「……あの」

「別に、になが子供だからとか思ってないし」


肩の手が外される。


「初めてだからとか、年下だからとか、まだ未成年だからとか、そりゃあ少しは思うけど」

「……十分思ってますよね」

「俺が、怖かっただけ」

「……怖い?」

「になを壊してしまったらどうしようって…………最近そればっかり考えてる」

「……それは?」

「やっぱ……になが初めてだからかな」

「完全に子供扱いじゃないですか」

「あのな、俺だって我慢してきたんだからな。俺が今まで何度キスを我慢してきたと思ってんの?」

「今しましたよね」

「もう、だからやばいんだって。そのうるさい口、また塞いでやりたい」

「ひどくないですか、完全にそれはけなしっ……」


その後に続く言葉は、雄斗さんの唇によって掻き消された。