泣きたくなる気持ちを押さえて、あたしは雄斗さんを押し倒した。


やられる前にやってやる。


……いや、そもそもやられる気配すらないけど。


カーペットの上に仰向けに倒された雄斗さんは何が起きているかわかっていないように目を大きく開いて困惑の色を示していた。


「鎖骨、噛み付きますから」


もはや許可じゃなく宣言。そんなもの待ってたら一生処女のままかもしれないのだ。


「ちょ、待て、にな…………っ」


両腕を床に押し付けて、あたしは雄斗さんの首筋に顔を埋めた。


唇に雄斗さんの体温が伝わってくる。


わずかに、しかし確かに雄斗さんの体がぴくりと震える。


その反応が異様に嬉しくて、あたしは何度も首筋にキスをした。


キスをしながらあたしの視界にワイシャツから覗いた鎖骨が映る。


そこから放たれる色気にあたしの中の理性はもうなくなりかけていた。


「にな、わかったから、もう…………」


突然降ってきた雄斗さんの掠れた声に、あたしの中にあったなけなしの理性がプツンと切れる音がした。


鎖骨に夢中で歯を立てる。


「…………っ」


雄斗さんの声にならない声があたしの鼓膜を震わせて、体の奥が熱を帯びてゆく。


鎖骨を噛み、吸いつき、なぞる。


歯と唇と舌であたしはそれをやってのけた。


同時に、あたしの中でもう一つの感情が生まれる。


雄斗さんと…………繋がりたい。


その時、あたしの肩が掴まれて壁に押し付けられた。