『ねえ!今日も帰ったら年下彼氏君がいるんでしょ?』
同じお店に勤める美紀があたしに尋ねる。
『うん、いるよ。』
『はぁ~いいな~、わざわざ九州から会いに来てくれるなんて。』
『ん~~ま~~…でも……』
『え?なに?喧嘩した?』
普段あたしは、あんまりプライベートは話さないほうだけど、この時はなんだかモヤモヤをすっきりさせたくて美紀に打ち明けてみることにした。
『それがさぁ、なんか最近遊ぶお金も外食費もほとんどあたしが支払ってるっていうか…』
『なによそれ!』
『この間なんて、バスの運賃さえあたし支払いで…』
『はあ??彼氏何歳よ??』
『あたしの5歳下。26歳だよ。』
『普通に大人じゃない!甘えてんじゃないの!!』
確かに、隆司は甘えてるように思った。
ほとんどのお会計の支払いの時、あたしは札を出すけど隆司は端数の小銭だけしか出さない。
『別にデート代を全部支払えって思ってるわけじゃないのよ。
わざわざこっちに来てくれてるからあたしもそれなりにごちそうしたいなぁ~とかは思うんだけど…』
美紀に話を聞いてもらってるうちに、徐々にモヤモヤがはっきりとした不満に変わっていった。
『でも、あたしだって娘を育てるために一生懸命働いて稼いでるし、将来のために貯金も増やしたいのに。
なんだかでっかい子供が一人増えた感じでなんかちょっと…』
『そりゃそうだ!いくら年下だからって男なんだから!
おれに任せとけ!ぐらいにならなきゃだめだよ!』
『やっぱ、そうだよね…』
美紀に打ち明けて、そして自分が隆司の優しさにただうもれていたことに気付いた。
あたしは隆司に遠慮して何も言えなかったんだ。
隆司が優しくしてくれてたから。
でもその優しさは生ぬるいだけの優しさ。
ほんとの優しさは強さも同時に持ち合わせてるものなんだと
あたしはその時そう思った。