1999年 冬


29歳になった11月、あたしは意を決して不動産屋に足を運んだ。


小さなアパートを見つけ、小学校5年生の娘と新しい生活を始めようとしていたから。

正確にいえば夫と別居する為に。


一人で娘を育てていくのに不安もあったけど、その先の明るい未来に希望の方が大きかった。


家を出る時は黙って行こうと決めていたので夫には知られないように事をすすめていたのだけど、

手付まで支払ったところで夫にばれてしまった。


不動産屋さんからの電話にたまたま夫がでたのだった。



『お前、何を勝手に家さがしてるんや!』

『だって、離婚してくれないから!』




バシッ!



あたしは平手打ちを食らった。




そして結局夫はあたしの制止を無視して不動産屋に契約破棄しにいった。
もちろん、手付金はもどってこなかった。


またもとの状態に戻るはめになってしまったのです。




うまくいかないときはホントにうまくいかないもので
ことごとく最悪な出来事が私に覆い被さってくる。