「水神? 来たわね、水の一族の長よ!」
母はぽよよんゼリーを弾き飛ばし、部屋を出ていった。敵前逃亡したらしい。
「アキさん、この間、ワタシの神社燃やしたでしょ。その時あなた、ワタシが落とした玉、持っていったんですよ」
亜紀はハッとしたような顔をした。
「心あたり、あるの?」
加奈が聞くと、彼女は渋々頷いた。
「何日か前、族の連中と、山奥にある心霊スポットの神社に行ったんだ。心霊スポットのくせに幽霊でなくてよ、生意気だから放火してやったぜ。そん時に拾った綺麗な玉のことじゃねぇかな。あれ、どこやったかな」
「ほ、放火だとおおおおお!?」
父は真っ赤になって怒鳴った。亜紀の頭を押さえつけ、深々と頭を下げる。
「申し訳ありませんでした。うちの……この馬鹿娘が!」
「気にせんでください。幸いワタシ、水の神なんで、全焼する前に火消せましたから」
「玉はどこだ、返しなさい亜紀」
「落としたっぺぇわ。ここには、ねぇよ」
妹は特効服のポケットを探り、けらけらと笑った。
「そんなはずありません。この家のどこかに必ずあります」
「ねぇっつってんだろ」
水神は首を左右に振る。
「この空間は水神専用貯水場なんです。ワタシが力を蓄えている場所です。基本ワタシしか入れませんが、玉が存在する空間や玉を手にした生物は、ここに来ることができます。この家がここにあるってことはですね、この家の中に玉があるということです」
ということは、こうなった原因は、親の妄想が具現化したわけではなく、その玉とやらにあるのだ。
や、や、や、信じていいのか、そんなこと。水神とかゼリーとか、もうなにがなんだかわからない。どうしよう無理だ信じられない。全部全部信じられない。でも、でもでも。もう、めんどくさい。いいや、信じてしまえ。
加奈達は急いで亜紀の部屋にむかった。中に入った途端、父は日章旗などにやられて興奮のあまり倒れてしまったので、姉妹だけでバタバタ荷物をひっくり返す。


