株式会社「C8」





そして、否定しても結局は同じ。

「他の悩み事?」と、話を進めて来るに違いない。

それなら、此処は先程考えていた事を素直に答えるしかない。



「ちょっと、亡くなった友人の事を思い出していて……。」


「まぁ、そうだったの…。余計な口出ししてごめんなさいね。」



顔は俯かせたままで細く呟けば立間は気まずそうに、乗り出しかけていた身を引っ込めた。

流石にこう言えば、これ以上は詮索して来ないだろう。


――これで良い、そっちはそっちでさっさと話を進めて――…


興味の的が自分から外れたのを確認しようと、少しだけ顔を上げたその瞬間…。



「!?」


「…………。」



あの時と同じ見開かれた狐目と視線がぶつかった。

小さく息を飲む音がする。それが自分の物だと気付くのに暫くかかる程動揺し、どうして良いのか分からなくなってしまう。

数秒前までどうでも良さそうな顔をしていたのに、今の何が奴の細い目をわざわざ開かせるきっかけとなったのか。

浩子が発したのはワンフレーズだけ。

今の言葉の何に?

それとも、浩子の顔に見覚えがあるのか。

それはそれで非常に良くない状況だが、此方は今回の件で初めて黒野の存在を知ったのだ。浩子本人に心当たり等ある筈も無く…。

忌々しい目は一向に他所を見ようとはせず、視線を微動だにさせない。

再び顔を隠すように俯いた浩子は黒野の意図を探ろうと必死に考えを巡らせるも、奴の考えている事が何なのか、的を得た答えを出せる程素性を知っている訳でも無い。


――何なのコイツ…。


いっそのこと直接聞いてしまえば良いのだけれど、顔を明かしたせいで今後の計画に何らかの支障が出た場合、それを対処し切れるかと言えば疑問だろう。

如何せん、こうもすんなり事が進まないとなると『良くある事』で片付けようにも頭がそれを受け付けてくれない。

何故なら、これまでの根詰まりの元凶は全て目の前にいる男にあるのだ。それを思うと苛立ちに身を任せ、奴の頭に銃口を向けたくもなってしまう…。



「………俺も、」


「!!」



突然、その低い声で沈黙を破った黒野。

自分に向けての声だろう、思わず浩子は顔を上げそうになるがそれを堪え、冷や汗を手に己の沈黙を守る。

しかし、その続けざまに聞いた言葉はとても奴の口から出た物だとは思えなかった。