カタカタカタ…
キーボードを絶え間なくタイピングする音が小気味良く感じるが、本人の額には冷や汗が浮かんでいた。
真っ黒の画面に物凄い勢いで緑色の英字コードがスクロールされて行き、それを打ち込んでいる八代。
現在、メインシステムから管理システムに到達し目的の監視カメラの専用コードを探している所だ。
探している最中にも、不正アクセス防止バリケードが邪魔をしてくる。それを一つ一つ破壊しながらの作業なのでなかなか進まない。
こうしている間にも、居場所を特定されてしまうのではないかと言う恐怖心やプレッシャーに思わず挫けそうになるが、こういったスリルも八代はたまらなく好きだ。
「……あ?……何だ、今の…。」
カタカタカタ…
一瞬、違和感を感じた八代。
緑色の英字の羅列の中に一文字だけ赤い英字が見えた気がした。「T」だった気がする。
緊張のしすぎだろうか?
「………気味ワリィな…。」
それにしても先程から妙にバリケードの突破が簡単だ。数はあるが破壊コードが単純すぎる…。
カタカタカタ…
そして…
「っ!、まただ!」
確かに赤い英字が見えた。一瞬だが緑色が赤く変わったのだ。しかも今度は「R」。
カタカタカタ…
これといった変化は無いが、嫌な予感がする。もし、この単純なバリケードが伏線だったとしたら…?
まさか、それは無いだろう。
昨夜、メンバーでハッキングを専門にしている奴に電話でここの管理システムの攻略法は確認した。こんな事は聞いていない。
カタカタカタ…
冷や汗が頬を伝い、キーボードの溝へ落ちた。脳が警報を発している。何か、何か、とんでも無い事になるような気がする…。
「…!?…おぃ、まさか……っ」
「A」、
「……っ……どうすりゃいいんだっ!」
カタカタカタ…
カタカタカタ…
「!!……P、TRAP……。」
四つ目の赤い英字が見えた時、緑色の文字の羅列が全て赤い英字に変わった。八代の手が止まる。全ての英字が四、五回点滅したかと思うと先程よりも猛スピードで文字がスクロールし始めた。
「!?…クソッ、早すぎるッ!」
カタカタカタ…
どうやらバリケードは伏線だった。外部から手が加えられているようだ。一定のコードを入力するとトラップが発動するようになっていたらしい。
