株式会社「C8」





八代は隣で頭をカクンカクンさせている浩子を横目に、バーでの会話を思い出して考えを巡らせていた。


――浩子は誤魔化してたが、絶対三年前に何かあった…。


彼は翼や他の辞めて行ったメンバーが死んだ事を知らないでいる。

故に、三年前から音沙汰の無い彼等の事も含め、慎也の死についても、浩子の変化についてもずっとモヤモヤとした物を抱えていたのだ。

冬真は冬真で何を聞いても曖昧な答えしか返って来ない。

八代が翼の格好を真似ているのは、単純に憧れから来るのもあるが、この裏社会で翼の事を知っている人物の目に止まるようにとの意図がある。携帯も解約されていたし、前に翼が住んでいた家は違う人間が住んでおり、彼の消息を聞いても知らないと言われた。


鍵を握るのは翼が以前利用していたコインロッカー。ダイヤル式の番号でロックしてある。その番号を八代は知っていた。

翼が「C8」を抜ける時、彼から密かに言われた事があるのだ。



『三年過ぎても俺の消息が分からない時はロッカーの中を見ろ。今俺が独りで調べている事が何なのか分かるようになってる。…この事は絶対誰にも言うなよ。中を見て、理解出来ないようなら全て燃やして忘れろ。俺もその時は自分の身がどうなっているかは分からない。ただ、触れてはいけない事に関わろうとしているのは確かだ。例のアイアンメイデンの他にもっと大きな…って、今はそんな事じゃなくてだ。いいか八代、慎也は――』



結局会話は雅の声に遮られてしまい、それ以上は聞けなかった。

だが、もう三年だ。年内にはロッカーを開けようと思う。


――何で翼はずっと連絡を寄越さねェんだよ…。何処で何してんだ。


そして、彼にはもう一つ気になる事があった。

田舎で暮らしている母から最近になって聞いた話だが、丁度慎也が死んで少し経った頃から父親と連絡が連絡が付かなくなっていたらしい。

元々、八代は父親と縁を切っていた為にそんな事はどうでも良かった。あの頃の父親が何処で何をしていたのかも知らない。知っているのは犯罪を犯しているという事だけ。

ただ、心配そうに話していた母の事を思うと少しだけ気にしてしまう。母は父と別れた後もずっと彼を想い続けていた。


――糞ジジィの奴、どっかで野垂れ死んでんじゃねェだろ-なァ。


それはそれで此方はスッキリするが、きっと母は悲しむだろう。泣いている姿は見たくない。